モデルとしての活動が知られる、田中シェンのファッションへの携わり方は、実にユニークだ。ファッションデザインをアメリカで学び、日本で企業デザイナーとして働いた後、ファッションモデルに。さらに最近はアートや演技に挑戦し、自分を表現する方法を貪欲に模索する。後半では、Pierre Louis-Masciaというブランドについて、さらに彼女が見据える今後のヴィジョンについて話を聞いた。

― 前編と衣装が変わりましたが、後半のスタイリングのポイントを教えてください

前半では、Pierre Louis-Masciaとコラボレーションする感覚で、自由な発想のスタイリングをしましたが、後半は真逆の発想です。Pierre Louis-Masciaというデザイナーの意図を汲み取って、正しく着ることを目指しました。シンプルに着ることは、簡単なようで意外と難しいことだと思っています。似合う、似合わないという判断基準に対し、スタッフの力を借りた上で、自分がどう合わせていくかが問われると考えています。

― ファッション好きのシェンさんが、Pierre Louis-Masciaをこのブランドを知らない人に紹介するとき、どのようなお勧めをしますか。

まずは、何も考えずに手に取ったものを着てみようぜ、と伝えますね。それが、なぜ素敵か、一番分かるのではないでしょうか。普通、アパレルの企業の考え方だと、ハンガールック(お店でハンガーにかかった状態のルック)が一番大事とされることが多いと思います。お店でお客さんが目にして手に取らない限り、購買に繋がらないからです。しかしPierre Louis-Masciaは、ハンガールックが異質で、袖を通すと素材や形に納得感が得られるのです。普段、無地やシンプルなスタイルが多い人ほど、着てみてぴたっとハマった時に、嬉しい発見があるんじゃないかと思いますね。

― Pierre Louis-Masciaは、イタリアのブランドですが、イタリアのファッションについてどんなイメージがありますか?

セクシーなイメージがあります。なので、ミラノのコレクションやミラノの街中で見る洋服と、東京の実生活で着ている人を見るとイメージが違うことがあります。都市が異なるだけで、こうも見え方が違うのは興味深いです。また、このブランドは遊び心がたっぷりのアイテムも多く、幼く見えるかもしれないと思うようなデザインも、上質な仕立てによって品よくまとまっている。そんなところにもイタリアを感じますね。

― 女優としても活躍していますが、演じることの難しさと醍醐味はなんでしょう。

女優として働いてみて、身体の隅々、心の隅々まで使う仕事ということがわかりました。なので、一生できる仕事ですし、そういう意味でも今後、ライフワークにしたいと思っています。また、日本語、英語、中国語の異なる言語で演じることの違いも実感しました。 日本語が一番難しいです。その理由は、内に秘める民族だから。日本人特有の”察する”ということが演技の中に入ってくるんです。また、話すときに顔の筋肉の動きが少ないことも大きいです。中国人や韓国人の女優さんは演技に激しさがありますが、日本人の女優は寂しさや哀愁が表現につながっているように感じます。限りなく静”に近い表現が必要とされる、そこに難しさを感じます。

― 最近、猫を2匹飼い始めたそうですが、彼らのどんな瞬間に癒されますか?

メスの樹林(じゅりん)とオスのトロロ、スコティッシュフォールドを2匹飼っていますが、家に帰ってきて無視されるときです(笑)。あとは落ち込んでいるときは、察知してお腹を見せてくるんです。「お腹撫でていいよ」って。樹林という名前は、大好きな女優の樹木希林さんのお名前から漢字をいただいて命名しました。勝手に生まれ変わりだと思っています。トロロは体の毛がグレーと白で、アニメの「となりのトトロ」みたいなので、トロロと名付けました。

※ 手前:樹林 奥:トロロ

― 最後に、今後ファッションやアートの分野で、やってみたいことがあれば教えてください。

一人でする表現や世界観については、もうだいぶ満足していて、今後は誰かと共同作業をしたい、人と繋がりたいと思っています。自分が素敵だと思うアーティストさんとともに何かできたらいいなと考えていて、来年の春に個展を行います。宇宙をテーマにした、多角的な視点によるアートの個展を想定しています。一つ課題があって、それに関して、各々の参加者が自分なりの答えを表現できるといいなと思っています。

Photograph_Ahlum Kim
Hair&Make-up_Mutsumi Miyazaki
Writing_Aika Kawada
Direction_Taro Kondo(TAROL!NGAL)

※ 田中シェンさんの前半のインタビューでは、彼女の半生と今回の撮影について話を聞きました。

田中シェン

モデル、女優、イラストレーター

鹿児島県出身。中学生よりアメリカで学生時代を過ごす。帰国後デザイナーとして就職するが、モデルになるため退社。英語、中国語、日本語を操るトライリンガル。モデルとしてだけでなく、イラストレーター、女優としてなど活躍の幅を広げている。独自のファッションセンスにも定評があり、インスタグラムでも注目を集めている。

Instagram:@shen_tanaka

「Pierre-Louis Mascia」のこと。

イラストレーターとして活躍するフランス人デザイナー、ピエール=ルイ・マシア氏による、スカーフを中心としたファッションアクセサリーブランド。
彼の創作のインスピレーションは、1900年代初頭のヨーロッパの文化や、その地域のアーティストから得たもの。詩情をたたえた都会的でタイムレスなデザインによって、ラグジュアリーの新しいカタチを、提案し続けている。

Instagram:https://www.instagram.com/pierrelouismascia/