モデルとしての活動が知られる、田中シェンのファッションへの携わり方は、実にユニークだ。ファッションデザインをアメリカで学び、日本で企業デザイナーとして働いた後、ファッションモデルに。さらに最近はアートや演技に挑戦し、自分を表現する方法を貪欲に模索する。そんな彼女の半生と今回の撮影について話を聞いた。

― ファッションに目覚めたきっかけは何だったのでしょうか。

アメリカではファッション学科の高校に通っていて、パソコンを一人一台与えられ自由にリサーチができる環境でした。なので、パリコレクションをチェックでするようになったんですね。その当時は、デザイナーならカール・ラガーフェルドが好きで、よくコレクションを眺めては「私がもしカールなら…彼のアシスタントなら…もっとこうするのに…」と妄想してはデザイン画を描いていました。あとは、漫画にも影響を受けていて、矢沢あいの『ご近所物語』や『パラダイスキス』で日本のファッションに興味を持ちました。

― その後、日本で勤めたアパレル企業では、どんな仕事をしていたのですか。

まず、デザイナーとして入社しました。そこで一度、ファッションデザイナーという夢は叶えられました。しかし、デザインをさせてもらうまでに何十年もかかるという、日本社会の年功序列に打ちのめされてしまい。デザインをすることはもちろん好きなのですが、もっとブランドを盛り上げたいという気持ちがあって「他の部署の方が向いているのではないか」と思うようになりました。そして、ちょうど販売促進のポストが空いたタイミングで、後任もいなかったので直談判して異動しました。その時は、ノベルティやカタログ制作、広告などを担当していましたね。

― それからどのようにしてモデルに転身したのでしょう。

知り合いのスタイリストさんが声をかけてくれて、週末にとある企画のモデルをしたんです。それが、事務所のマネージャーさんの目に止まって、スカウトされました。芸能の仕事に憧れはあったのですが、現実的に考えていなかったので驚きましたね。でも「やるなら今しかない」と思い、アパレル企業を退職して、モデルとして仕事をするようになりました。会社を辞めて、働き口があってラッキーという感覚でした。

― 現在は、モデルの他、アートディレクションやイラストレーションも手がけていますが、制作はどのようなツールでしていますか。

絵はすべてパソコンで描いています。鉛筆で下書きもしないんですよ。とにかく飽き性なので、二度同じことをするのが苦手。偶然との出会いも好きだから、描いた線を消すということもしないんです。あとは、デジタルは紙とは違い、データを沢山蓄積できていくらでもプリントアウトできるところも好きですね。

※実際に田中シェンさんが描いたイラスト

― モデルとデザイナー、2つの視点を持っているかと思いますが、それぞれの視点でPierre-Louis Masciaというブランドをどのように思いますか。

まずモデルとしては、第一印象は「この服に負けたくないな」でした。どのアイテムもアーティスティックでパンチがあるので、埋もれてしまうことなく、綺麗に洋服を見せたいと思いました。デザイナーとしては、こんなにもたくさんの色や柄が組み合わさっているのに、不思議と調和しているところに魅力を感じましたね。またPierre-Louis Masciaというデザイナーのユニークな感性から、彼が独特なものに囲まれて育ってきたことが感じ取れました。

― 今回のセルフスタイリングのポイントを教えてください

この洋服を目一杯楽しむためには、どうしたらいいかなと思い、直球ではない着方に挑戦しました。例えば、スカーフをビスチェみたいに着たり、アウターをスカートのように着たり。アイテムを使って新しくシルエットを作る感覚で、Pierre-Louis Masciaと勝手にコラボレーションしたと思っています。そうやって、人と繋がるのが好きなんです。

― ずばり、スタイリングで表現したかったことは。

宇宙人ですよね(笑)。Pierre-Louis Masciaの洋服は、“まとまっているようでまとまっていなくて、まとまっている”。そんな印象があって、その感覚に私が乗っかったというのはあると思います。ピカソの絵にも同じものを感じるのですが、遠くから見るととても緻密で計算されているように見えるのに、近くで見ると粗野で大胆に見える。なので、洋服に入っている柄や色の組み合わせが最大限生きるように、バランスを考えました。

― 撮影はすべて中野で行いましたが、ロケ地に中野を選んだ理由を聞かせてください。

ファッションの大学を卒業してNYから日本に帰国して初めて住んだ街が中野だったんです。中野ブロードウェイには、毎日のように通っていました。今回は、原点回帰ということですね。

Photograph_Ahlum Kim
Hair&Make-up_Mutsumi Miyazaki
Writing_Aika Kawada
Direction_Taro Kondo(TAROL!NGAL)

※ 田中シェンさんの後半のインタビューは、7月12日に公開します。

田中シェン

モデル、イラストレーター

鹿児島県出身。中学生よりアメリカで学生時代を過ごす。帰国後デザイナーとして就職するが、モデルになるため退社。英語、中国語、日本語を操るトライリンガル。モデルとしてだけでなく、イラストレーター、女優としてなど活躍の幅を広げている。独自のファッションセンスにも定評があり、インスタグラムでも注目を集めている。

Instagram:@shen_tanaka

「Pierre-Louis Mascia」のこと。

イラストレーターとして活躍するフランス人デザイナー、ピエール=ルイ・マシア氏による、スカーフを中心としたファッションアクセサリーブランド。
彼の創作のインスピレーションは、1900年代初頭のヨーロッパの文化や、その地域のアーティストから得たもの。詩情をたたえた都会的でタイムレスなデザインによって、ラグジュアリーの新しいカタチを、提案し続けている。

Instagram:https://www.instagram.com/pierrelouismascia/

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