_モデルやファッションアイテムなど、自分以外の対象を魅力的に見せるようなお仕事をなさっている東原さんですが、自分自身を飾ることと他を飾ることに違いはありますか?

これは本当に違う。自分以外を魅力的に見せる仕事をしているので、どんなヘアメイクにしてどんな服を着せてどんな所に立たせたら、そのモデルさんが一番素敵に見えるのかをまず考えます。

これって、言ってしまえば私の妄想を形にする仕事なんです。だから、妄想を実現するための努力は惜しまないし、完璧なバランスをつくるために細かなところにまで気を配ります。

でも、自分自身に関しては全く飾っていませんね(笑)。仕事と違って、特別な努力をしていません。ただ自分が心地いいと思える服を選んでいるだけです。

_なりたい姿を妄想したりしないのですか?

しないんですよ。「素敵だな」と思う人はいるんですけど、その人になりたいとは思わない。もちろん、欧米人のようなくせ毛に憧れてパーマをかけたり、何かに憧れて自分を飾っていた時期もありましたよ。でも、だんだんと自分に似合うものが分かってきて、妄想に近づくために飾るというよりは、それを着ることで自然体でいられるような服やメイクを選ぶようになりました。

_今日の撮影では、普段と違ってご自身がモデルとして被写体の側に回られましたが、いかがでしたか?

今日のように自分が撮られるなら、普段の自分の服選びとは違って、妄想します。例えば今日は、コンサバ顔な東原妙子がこのストールを身につけるなら、どうすれば素敵になるのか。そんな風に自分を客観的に捉えるところからスタートしました。

_では、今日のコーディネートのポイントを教えてください。

モデルさんのようにいろんなものが似合う人はいますが、多くの人には似合うものと似合わないものがあります。どんなに素敵な服を着て、トレンドをおさえていても似合っていなかったら台無し。やっぱり、最も似合う服装をしている人が魅力的じゃないですか。

私はあまり個性的な服を着こなせるタイプじゃないし、普段からベーシックなものを好んで着ているので、ベーシックなワンピースをまず選びました。そこにスカーフの柄とファーをポイントとして挿すことで、「ただのベーシック」に微差が生じて「魅力的」になることを意図しています。

このスカーフはいろんなアレンジができるアイテムですよね。Tシャツとデニムに合わせて、こなれた感じにしても素敵だと思います。今回は秋らしくシックなムードを漂わせ、ストールが主役になるように、ベースは黒にしました。ワンピースのシルエットは、コンサバでもカジュアルでもない、モダンでエレガントなものをで、ファーをさりげなく身につける女性像をイメージしました。

大人の女性が柄を入れると、変に派手過ぎて見えることがありますよね。そうならないように、髪はタイトに抑えてアイメイクも控えめにしました。代わりに、眉を強めに引いて顔はマニッシュなつくりにしています。顔がマニッシュなら、ファーが甘く見え過ぎずモダンな印象が演出できるんです。

_東原さんの「itアイテム」を参考にする女性がたくさんいますが、「いいな」と思うアイテムと、そうでないアイテムの違いはどこにありますか?

究極的に言うと、いいと思う服は着ていて気持ちがいいものなんです。それは機能性素材で楽に着られるということではありません。裸でいるよりもスタイルがよく見えたり自分の顔が映えたり、周囲に好感を持ってもらえたりする服が、着ていて心地いいんです。

自分に似合っていて、気分が上がる服ってあるじゃないですか。直感的にそう思える服って、着心地もいいはずなんですよ。

_自分のスタイルとトレンドとの折り合いをどのようにつけているのですか?

ファッション誌の編集を仕事にしているので、もちろんトレンドに敏感でいようと心がけています。

極限までシンプルを追求したファッションのノームコアが最近まで流行っていましたが、いまは柄物やあらゆるテイストをミックスしたファッションが当たり前になっていますよね。こうなるとファッションにおける「こうあるべき」という縛りは、もはや希薄になっていきます。

雑誌の発信する流行がある一方で、コミュニティ内での局地的な流行も力を持ってきました。万人受けしなくても、自分の周りに「おしゃれ!」と褒められれば、それでいいのがいまなんです。

意固地になって自分のスタイルだけを貫いていると単なる古い人になってしまうので、大きな流れとしてトレンドを意識することも大事です。でも、自分のことをよく見せてくれるアイテムを選ぶことは、もっと大事なことなんじゃないでしょうか。

_ファッションに限らず、最近どんなことに興味がありますか?

温泉かな。箱根によく行くようになりましたし、毎週のように都内の健康ランドに足を運んでいます。夕方、健康ランドに行ってぼーっとお湯に浸かり、お酒を飲んで少し寝て、帰り際にもうひと風呂入るみたいな。とにかく癒しを求めていますね(笑)。

あとは、家を新築したので、いいインテリアを探しています。まだ家具が揃っていないので、ほとんど何もない空間で生活しているんですよね(笑)。

_インテリアとファッションに共通していることはありますか?

ビンテージとか西海岸風とかインテリアも色々あるけど、私は北欧系デザイナーの名品が好みです。シンプルな中にも程よく贅沢感があって、モダンなんだけど温かみ感じられるような家具っていいですよね。服えらびも同じで、名品と言われるベーシックなアイテムを選んできました。

定番として昔から愛され続けるものを買って失敗したことがないんです。だから、本物思考で、なんでも一番いいものを選ぶようにしています。

また、インテリアもファッションも全体のバランスが大切です。部屋に置く家具の色を考えることとネイルカラーやコーディネートを考えることは、他の要素とのバランスを考慮して細部を詰めていくという意味で同じことなんです。

_東原さんにとっての「自分らしさ」とは、「自然体」であることとお見受けします。では、「自然体」とは東原さんにとってどんな状態であることなんですか?

自然体=何もしないことではないんです。身の丈よりもちょっと自分を上げてくれる服、裸でいるよりも自分をよく見せてくれる服を着ることが私のこだわりです。そうしたファッションに身を包むことで、私は心地よくなれるし、自然体でいられるんです。

東原妙子

ファッションエディター

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、大手銀行に就職。25歳で編集者に転身。現在は『Marisol』『BAILA』『25ans』などの女性ファッション誌を中心に、広告やカタログのディレクションも手掛ける。アパレルブランドのバイイングやコラボ商品の開発など、編集者の枠を超えて活躍中。

Instagram:https://www.instagram.com/taekohigashihara/

「Pierre-Louis Mascia」のこと。

イラストレーターとして活躍するフランス人デザイナー、ピエール=ルイ・マシア氏による、スカーフを中心としたファッションアクセサリーブランド。
彼の創作のインスピレーションは、1900年代初頭のヨーロッパの文化や、その地域のアーティストから得たもの。詩情をたたえた都会的でタイムレスなデザインによって、ラグジュアリーの新しいカタチを、提案し続けている。

Instagram:https://www.instagram.com/pierrelouismascia/

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