まだ親が買ってきた服を着ていた中学生の頃、京都の実家から大阪のアメリカ村に出かけたとき、古着屋で『AKIRA』のプリントTシャツを見つけて衝動買いしたんです。自分でビビッときた服を買う楽しさを知ったきっかけでした。

ファッション誌を読むようになったのは中学3年生の頃。実は当時からメンズよりもレディースの雑誌が好きで、いまはなき『オリーブ』を愛読していました。ファッション以外にもカルチャーを学んで、興味の幅が広がって行きましたね。当時から少しとんがったスタイルが好きで、今でもお店に並んでいる服の中で、他の誰も興味を示さなそうな一風変わったアイテムを選んで着ています。だから行きつけのお店のスタッフさんにも、「千原さんしか買わないと思うから、これどう?」とすすめられることがよくあるんです。

仕事でニューヨークに行くことが多いのですが、必ず古着屋に行き、キャラクターもののパジャマとか、派手なネクタイやシャツ、帽子などを買っています。京都の古着屋もよく覗いていますね。ファッションに目覚めた頃から今に至るまで、僕は流行ではなく独自性を追求してきたんです。

ピエール=ルイ・マシアの服もすごく個性的でいいですね。アーティスティックなだけじゃなくて、フロントの重なりがダブル風だったり、ディテールにもこだわりを感じますね。

服装だけでなく、金髪も自分らしさを伝える僕のスタイルのひとつですが、実は偶然の産物だったんです。通っているヘアサロンのスタイリストさんに、「金髪にしちゃいなよ。普通と違う外見で、話が通じるのか相手を不安にさせてしまうぐらいが、クリエイターとして話がしやすいのでは?」とアドバイスされたのがきっかけなんです。その場で染めることを決心してから10年来、ずっと金髪です。以来、かつてデザイナーでもあったヘアスタイリストさんの助言通り、僕の提案や意見が説得力をもって相手に受け入れられるようになりました。

独特の服装に金髪と、いつものスタイルでお葬式にも参列してしまうほどに、あえてTPOに合わせないポリシーが、僕の個性だと自負しています。ずっと髪型を変えないいとうせいこうさんや、サングラスを貫くタモリさんのように、独特なスタイルでも、その人にとってのスタンダードが一般的に受け入れられてしまうことに憧れています。「千原さんは、ああいう人だから」と、特別免除してもらえるようになりたいんです。そういう意味で、「自分は千原徹也というキャラクターのコスプレをしているんだ」という意識もどこかで抱いていますね。

僕のように主張の強いファッションは、周囲に自分の得意とするデザインの路線や発想を認識してもらいやすいというメリットがあると感じています。とはいえ、僕や僕の事務所の作例を見て、「前例のようにつくって欲しい」という依頼が多いことに、少し悩んでいます。本当はこれまでにない、新しいことに挑戦させてほしいとも願っているんです。

そういえば、桑田佳祐さんがサザンオールスターズを抜けてソロ活動しているのは、世間がつくりあげた「サザンっぽさ」から脱して、本当に好きな曲をつくるためだと聞いたことがあります。桑田さんと比べるのもおこがましいですが、「れもんらいふっぽいもの」ではなく、もっと新境地に挑みたいと思っています。

元来、僕は自分にとって新しいと感じるものを求めながら生きています。自分の事務所を立ち上げ、部下ができると、上司として監督や指導をする義務がありますが、部下に任せてみると思い通りに行かないことが多い。ですが、それも新しいものに出会えるいい機会だと捉えています。信じて任せた人の個性ですし、自分では考えてもみなかったような発想に出会えることもあります。自分の想像を超えたものに出会えたとき、純粋に嬉しさがこみ上げてくるんですよ。

また、インプットすることも新しいものに出会うために重要な行為です。映像や本、音楽など、興味の赴くままに吸収したものこそが個性の下地となり、斬新なアウトプットにつながります。常に頭を働かせて、新しいものを求めて移動をするようにもしています。ぼーっとしていると、思考が停止してしまいますし、事務所でばかり仕事をしていると、ビジネスライクな考え方に偏ってしまう。だからクリエイティブになりたいなら、代官山のカフェなどに行き、脳をお洒落なカフェ仕様にリハビリするんです。シチュエーションによって頭の働きは変わるのではないでしょうか。

こうして、まだ誰も見たことのないようなアイデアを追い求めているわけですが、いつも気をつけているのは、デザインする対象をあまり突き詰めて探らないようにすることです。自分の中で、いま一番熱い昔の映画やカルチャーからインスピレーションを得た要素を、対象のストーリーに紐づけていくのが僕の得意のやり方です。あえてまったく関係のないような視点からアプローチをしてみることで、デザインの幅が広がります。当たり前に存在している縛りを超えたときの気持ちよさは格別ですし、殻を破った自分への自信も湧いてきます。縛りと、それを打破することによる新しい価値や自由、それらの関係性がファッションやデザインを考える上で大切だと思います。

千原 徹也

株式会社れもんらいふ 代表
アートディレクター/グラフィックデザイナー

故郷である京都でデザイン業を始め、2004年に上京。大手広告会社やファッション関係のデザイン事務所を経て、11年にデザインオフィス「株式会社れもんらいふ」を設立。広告、装丁、ファッションブランディング、WEBなど、デザインのジャンルは多岐にわたる。ラジオパーソナリティ、アーティストのMVやCMの監督なども務め、クリエイションの幅を広げている。

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