_今年は振り返るとどんな上半期でしたか?

年始はドラマの撮影をしていましたが、3月末ぐらいから2ヶ月程お休みをいただいて、ロサンゼルスとニューヨークを旅行していました。世界には多様性があり、それを認めている人と認めていない人がいるというのを目の当たりにできたのが面白かったですね。

_伊藤さんにとって、旅とは?

旅に出て帰ってくると、日本人の温かさを再認識できます。もちろん海外にも良い方はたくさんいますが、日本人の気質は世界でも飛び抜けていると感じます。こんなにいい国は、他にはないなと。

_数多くのドラマや映画に出演していらっしゃいますが、ターニングポイントはどこにあったと思いますか?

たくさんある気がします。作品だけでなく、監督との出会いもそうです。なかには一生の恩人と言える方もいらっしゃって、その方の作品ならば、どんな役でもいいから出たいという想いがあります。またご一緒できたらすごく嬉しいですし、自分の成長した姿を見てもらえたらいいなと。映画の世界では、いろいろな方にお世話になっていますね。

_伊藤さんは、ドラマ『昼顔』の演技が「怪演」と呼ばれ、一大センセーションを巻き起こしましたが、役に入るための独自のこだわりや流儀のようなものはありますか?

私のなかでは、ひとりの人間をしっかり演じるということを大切にしています。作品によって違いますが、あえて作り込まない時もあります。ただ、そのキャラクターが持っている記憶みたいなものは、シーンにはなくても作品に入る前に何かひとつは作るようにしています。私の癖なのかもしれませんが、特に助演の際は、映っていない部分やシーンをすごく想い描いています。どの作品もどういう目線で紡がれていくかで、人の見え方も違ってくると思うので。

_仕事は、どう呼び込まれてくるものなのでしょうか?

目の前の作品に、ひとつひとつ真剣に取り組むことで、次に繋がっていくような気がしています。観てくださった人が、次にお声掛けくださる場合も多いですね。

_伊藤 歩さんは弱冠13歳でスクリーンデビューを果たして以来、本当にさまざまな役柄を演じてきただけでなく、音楽活動など枠にとらわれない活動をされてきました。これからどんなチャレンジをしたいのか、どんな野望があるのかを教えて頂けますか?

スーパーヒーローをやってみたいかも(笑)。スーパーヒーローって、なかなかできないじゃないですか。だから、一生に一度くらいはやってみたいなと思います。

_ファッションやスタイルに対するこだわりや、「自分らしさ」として大事にしていることを教えていただけますか?

昔は音楽に大きく影響を受けていて、奇抜な格好もしていました。最近は落ち着いていますが、冒険は忘れないようにしたいなと思っています。どうしても安全安心な方を選びがちですが、自分らしさというものを、もう一度ファッションを通して全体像で考えたいなと。買い物では、なりたい自分を想像して、理想に近づけるようなアイテムを選ぶようにしています。ちょっと背伸びをして買っても、着ていくうちに自然と馴染んでいくこともあるので、チャレンジは常にしているかもしれません。その一歩踏み出した高揚感のようなものが、日常にあると楽しいですね。

_身につけるものからインスピレーションを得ることもありますか?

もちろんあります。例えばダイヤの指輪を買ったら、これにはどんな服が合うのか? どんな自分なら似合うのか……? など自然と想像を掻き立てられます。役作りでも、衣装ってすごく大切で、着た瞬間にその役に切り替わるなど、ものが持つ力に頼ることはありますね。

_今日はピエール=ルイ・マシアをアーティスティックに着こなされていらっしゃいますが、服の個性に負けない存在感が伊藤さんにはあると感じました。

個性と個性が混ざり合うと、新しい何かが見えてくるケースがあります。それは作品作りでも同じで、それぞれの個性が上手くかみ合った時にお互いが引き立ちます。今日も新しいスタイルができて、とても楽しめました。

_普段、理想の自分を作るためにしていることはありますか?

実を言うと、個性ってなんだろう? と未だに悩んでいます。自分の内側から出てくる個性を自覚するというところまで、まだ至っていない気がするんですよね。好きなものは徐々に分かってきてはいますが、「自分らしさ」というのはまだ模索中かもしれないですね。私は意外と人に影響されるので、周りにいる素敵な方からいつも刺激を受けています。結局、ひとりでいると個性ってよく分からないんですよね。人と交わった時に初めて、自分の存在感や意見が出てくるのだと思います。人と関わることは、個性を発見したり自覚する機会なのかもしれません。
また、人がいいと言ったものは、テレビ番組でもアートでも、食べ物でも、何でも試すようにしています。意外なものから紐づいて、思いもよらないことに繋がっていく場合もあるんです。自分自身に飽きてしまうと、周りがつまらなく見えたりしますが、まだまだ知らない世界があると気づけると、自分らしさを再発見できるんです。

_映画『平成細雪』や『関ヶ原』などの作品では着物姿もお美しい伊藤歩さんですが、着物はお好きですか?

好きですね。特に一昨年からは撮影で着る機会も多かったです。着物って実は、色や柄が奇抜な組み合わせだったりしますよね。襟のレイヤーなどがすごく面白いなと思います。美しい文化ですよね。今日着ているマシアの服も、少し着物っぽい要素があるなと感じました。素材もシルクと綿を組み合わせていたり、ある意味、日本の文化に近い気がしました。

_仕事と関係なく、リラックスやリフレッシュ、純粋な楽しみのためにやっているアクティビティや趣味には、どんなことがありますか?

何かしら身体を動かすようにしています。時間がある時は、走ったり、ジムに行ったり、パーソナルトレーナーについたりもしています。きついトレーニングでは、それまで抱えていた悩みを一瞬で忘れたりできるんですよね。その時間が自分にとっては大事で、一番のリフレッシュになっています。あまりに忙しく、走ったりできない時には、仕事帰りに途中で車を降ろしてもらって歩いて帰るとか。私にとっては身体を動かすことが、心身ともに健康で過ごすポイントです。

_実力派女優として唯一無二の存在感をお持ちの伊藤歩さんですが、そんな「オリジナルな自分になる」ためのコツやヒントを教えて頂けますか?

私もまだ探しているところですが、突き動かされるものって絶対あると思います。小さい時から好きなことって絶対ありますよね。仕事と関係なくても、好きなことをする時間を大切にすると、何かに繋がったりすることもありますし、新しいものとの出会いによって、自分の個性が生まれていくと思います。新しいことを始める時に、怖くて尻込みしてしまう気持ちも分かりますが、思いっきり飛び込んでしまうというのもひとつの手かもしれないですね。死なない限り大丈夫だと思って、「えいっ!」て飛び込む。たまには勇気を振り絞って、好きなことをひとつやってみる。そういうジャンプも大切だと思っています。

伊藤歩

女優

1980年、東京都出身。1993年に映画『水の旅人-侍KIDS-』(大林宣彦監督)でスクリーンデビュー。96年、映画『スワロウテイル』(岩井俊二監督)で第20回日本アカデミー賞新人俳優賞および優秀助演女優賞を受賞。
以降も映画『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)、『カーテンコール』(2005年)、『GANTZ』(2011年)、『関ヶ原』(2017年)などに出演し、日本の映画界になくてはならない実力派女優としての地位を確立する。
また2014年のテレビドラマ、および2017年の映画『昼顔』では迫力の演技を見せ、センセーションを巻き起こした。演技以外にも、2001年にYUKI、CHARA、YUKARIE、ちわきまゆみとともに女性5人で結成したバンドMean Machineでヴォーカルを務めるなど、枠にとらわれない活動が注目を集めている。

URL:https://www.7th-avenue.co.jp/profile/detail.php?id=ito
Instagram:https://www.instagram.com/ayumi__ito/

「Pierre-Louis Mascia」のこと。

イラストレーターとして活躍するフランス人デザイナー、ピエール=ルイ・マシア氏による、スカーフを中心としたファッションアクセサリーブランド。
彼の創作のインスピレーションは、1900年代初頭のヨーロッパの文化や、その地域のアーティストから得たもの。詩情をたたえた都会的でタイムレスなデザインによって、ラグジュアリーの新しいカタチを、提案し続けている。

Instagram:https://www.instagram.com/pierrelouismascia/